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【追悼】イダ・ヘンデル 「本能で弾く」ブラームスの協奏曲

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神童だった少女時代からの演奏活動歴は、実に70年以上。

20世紀のまさにレジェンドの一人、イダ・ヘンデルが、2020年6月30日に、91年に渡る生涯を閉じた。

ポーランドのヘウムに生まれ、ワルシャワ音楽院で学んだ後、ベルリンでカール・フレッシュ、パリでジョルジュ・エネスコに師事した。

1935年には、「第1回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール」に出場した。

優勝はジネット・ヌヴー(15歳)、第2位はダヴィッド・オイストラフ(26歳)。

イダ・ヘンデルは第7位だった。

ヘンデルの生年には1923年〜28年まで諸説あるが、1928年生まれだとすると、この時わずか6歳。1923年生まれだとしても、11歳である。

3年後、ヘンデルはロンドンのクィーンズ・ホールで、「プロムス」デビューを果たし、 ヘンリー・ウッド指揮のBBC交響楽団と、ブラームス:ヴァイオリン協奏曲を共演した。

以下に、イダ・ヘンデルが、かつてブラースムのヴァイオリン協奏曲について語ったインタヴューの一部を抜粋して掲載する。(Source : “The Strad”)

9歳、まるでイザイが弾いているような

私が人前で最初にブラームスを弾いたのは、9歳の時。1938年9月、プロムス(Proms)のコンサートで、ヘンリー・ウッド指揮BBC交響楽団と共演した時でした。こんな子供にブラームスが理解できるわけがないと誰もが思ったことでしょう。

イダ・ヘンデルの生年は1923年(※)から1928年まで諸説ある。

インタビューでは1928年説に立っているが、かりに1923年生まれで当時14歳だったとしても、ブラームスを弾く年齢としては極めて早い。しかも、プロムス という大舞台である。

私は純粋に本能のままに弾きました。ブラームスを弾くのに必要なものは、持って生まれたこの本能です。魂で感じ取るもの、資質のない人には教えることができないものです。

この時の指揮者ヘンリー・ウッドは、イダ・ヘンデルの演奏に感銘を受けて、後にこう書いている。

「彼女があの協奏曲を見事な響きと情感で弾きこなすのを聴いていると、まるで私の横で旧友イザイその人が演奏しているのではないかと思ったほどだ。」(ジャン=ミシェル・モルク著『偉大なるヴァイオリニストたち』 ヤマハミュージックメディア P247~248)

“本能で弾く” は正解だった

ブラームスのスコアを研究し、他の演奏家の演奏を聞くようになった20歳の頃に、イダ・ヘンデルは、ある結論に辿り着く。

今までこの曲については、多くのことを本能で感じるままにやってきましたが、それらはすべて正解だったということがわかりました。一部演奏効果を出すために、解釈を変更する部分はあったのですが。

力強く、同時に哀感と叙情性に富んだブラームスの協奏曲。

ロマンチックな第2楽章を弾くと、ヘンデルは今でも涙が出るという。

感情を引き出せなければ、ブラームスを弾いていることにはなりません。でも同時にこの曲は、とてつもないパワーと音量を必要とします。弱々しい奏者は弾くことができません。モーツァルトやベートーヴェンならごまかしがききますが、ブラームスはそうはいきません。ブラームスはとても男性的な音楽、もちろん女性が弾けないわけではありませんが。そう、男勝りの音楽なのです。

偉大な指揮者の思い出

ブラームスの第1楽章、雄大なスケールで始まる第1主題提示部。協奏曲のオープニングでは、指揮者とオーケストラの真価が問われる。

本当に優秀な指揮者は数えるほどですが、私はオットー・クレンペラー、サイモン・ラトル、セルジュ・チェリビダッケと共演する特権を得てきました。大きな協奏曲では、オープニングが良くないと、全体が台無しになってしまいます。良い提示が良い展開を呼び起こします。ベートーヴェンの協奏曲ではクレンペラーが最高でした。ブラームスはチェリビダッケの力強さと叙情性に感服しました。

1953年、イダ・ヘンデルはチェリビダッケ指揮ロンドン交響楽団とブラームス:ヴァイオリン協奏曲を録音した。

極めて要求度が高いと評判で、とても辛口で、結果には決して満足しないというチェリビダッケとの共演だったが、彼はヘンデルのやりたいことをすべて認め、受け容れたという。

何度も彼は「イダ、こうしたほうがいいんじゃないか?」と言いましたが、彼は私に同意し、私のやり方に従ってくれました。大変名誉なことで驚きました。なぜそうしてくれたのかわかりませんが、今でも誇りに思っています。

photo by Amanda Slater

Ida Haendel Plays Brahms And Tchaikovsky (Goossens, Rpo) by London Symphony Orchestra (1994-06-01)

イダ・ヘンデルの「1923年」生年説について

ヘンデル自身がストラド誌のインタヴューで語ったところによれば、1937年にイギリスのコヴェント・ガーデンでトーマス・ビーチャム指揮によるコンサートがあった時、14歳以下は出演できない規則だったために、エージェントとヘンデルの父が相談して、ヘンデルを14歳だと申告して出演させた。以来、それが記録として残ってしまったという。

 悲観的な人は風に文句を言い、楽観的な人は風向きが変わるのを待つが、現実的な人は帆の向きを風に合わせる。
(The pessimist complains about the wind; the optimist expects it to change; the realist adjusts the sails)

ウィリアム・アーサー・ウォード(効く言葉 List

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