7年前に受けた インタヴュー写真 からは、まさに食べてしまいそうなほどこのストラディヴァリを愛していることが伝わってくる。
2年前のインタヴューでも、次のように語っていた。
「極上のイタリア料理のようなものです。最高の食材を使えば、何も付け加える必要はありません。」
ストラディヴァリ “黄金期” の名器を弾くヴァイオリニストは? のリストにも入っていた、フランク・ペーター・ツィンマーマン愛用の1711年製ストラディヴァリ “ Lady Inchiquin(レディ・インチクイン)” 。
しかし近々ツィンマーマンは、この楽器と辛い別れをしなければならなくなるかもしれない。
所蔵している銀行は実質破綻
この楽器を購入しツィンマーマンに貸与しているのは、ドイツの州立銀行「ウェストLB」(デュッセルドルフ)。
サブプライムローン関連の巨額損失で実質破綻状態に陥り、分割再編・資産売却の処理が進められる中、ストラディヴァリを含む同銀行が所蔵していたすべての美術コレクション(400点)がオークションで処分されることになるかもしれないという。
見積価格は約1億~1億5千万ユーロ(約140億~210億円)。
2001年に貸与されて以来、そのストラディヴァリはツィンマーマンの「体の一部」となっていた。
レパートリーの大部分のスコアをすべて買い換えなければならないほど、音楽観と演奏法について多大な影響を受け、ブラームスやベートーヴェンの協奏曲を弾く時は、ボウイングをオリジナルなものに変更した。
際立った豊かな響きを持ち、ヴィブラートを多用する必要はなかったという。
「ウェストLB」の承継会社の幹部は、同銀行の資産はすべて売却する必要があるとする一方で、ノルトライン=ウェストファーレン州のいくつかの美術館やギャラリーに展示された同銀行の美術コレクションの一部については、その保全に協力したい意向を示している。
コレクションの絵画にはピカソやダリ、マッケ らの作品が含まれている。
1711年製ストラディヴァリが仮にオークションにかけられたとしても、競り落とした先が再びツィンマーマンに貸与。そんな展開を願わずにはいられない。
(Source : “The Strad”)
動画は、ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番。マリス・ヤンソンス指揮:バイエルン放送交響楽団との共演。