比較対象を作る
紐付きは駄目、自由に選ぶべきだとは思いつつも、大概は指導者と気まずくなりたくない等の理由で、勧められた楽器を購入することになりがちです。
「リベートを受け取るような指導者は碌でなし」と息巻いても、それを当然のことと見なす風潮がなくなっていない現状があります。
もちろんそんな指導者ばかりではありませんし、幸か不幸か100万までの楽器ならば、万万が一引っかかっても被害はまだ軽微で済みます。色々細工する手間が引き合わない金額だからです。
次善の策として、先生から勧められた楽器がどうも納得できない、あるいは他の人の話など聞いて変だと感じられたら、即決せずに、「どうしても断りきれない筋からも一丁持ち込まれている」「資金面で事情がある」等々口実を設けて、必ず別の楽器商をあたって比較の対象を作り、先生に弾き比べてもらうことです。
あるいは勧められている楽器を一週間程度借り受けて、口コミで信頼できる工房を探し、セカンドオピニオンを求める手もあります。きちんとした工房なら5分もあればその楽器の良し悪しを見抜いてくれます。
良い楽器商は処方箋を持っている
楽器を生かすも殺すも調整で決まります。ヴァイオリンはピアノなどと比べて作りが単純ですから、ちょっとした違いが大きく響きます。長期にわたるメンテナンスが重要になってきます。
少し具体例を述べますと、フルサイズになればアジャスターを外して糸巻きの調弦になります。このときのペグと穴がぴたりと合っているかどうかが、微妙な調弦を可能にする鍵となります。
少しの歪みでもペグは正確な位置にとどまることができませんから、いつまでたっても調弦が上手くならない、どこからか聞きかじった知識で白墨など塗ってみる、更に歪みが大きくなる、の悪循環となりかねません。
弓の毛替えも同様で、毛の材質にも色々あり、楽器に相性のいい毛を選んで使ってくれるところもあれば、どうせ学生だからと粗悪な毛をいい加減に張るところ、自分では毛替えが出来ないので外部の人間に委託するところもあります。
また弦の選択でも本人の好み、力量、懐具合、楽器との相性で色々アドヴァイスをくれるところもあれば、本人の好みです、これが常識です、で済ませてしまうところもあります。
つまり、ただ楽器を右から左へ流しているだけのところでは何かトラブルが起こったときに的確な処方箋が書けず、そのうち良くなるとか、買い替えが必要、と逃げを打つことになるのです。
実際に楽器を作れる人からのアドヴァイスは貴重で、そこから買えなくてもいいですから、口コミを利用して探してみる価値はあるでしょう。
年季の入った人なら業界の裏も表も知り尽くしていますから、師事する先生がどんな人か大体はわかっていて、それなりの対応をしてくれるはずです。
プロでもないのに、と尻込みする必要はありません。そういうところにこそ50万から億のストラドまで色々と隠れているものです。
ヴァイオリン購入のための参考書籍
銘柄や鑑定書の知識、価格の決まり方、相場なども、具体的かつ詳細に記した、ヴァイオリン選びのバイブルとも言える名著。
神田侑晃著『ヴァイオリンの見方・選び方 基礎編・応用編』
改訂 ヴァイオリンの見方・選び方 基礎編 -間違った買い方をしないために-
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