ゆっくり練習、力の抜き方を体得する
音高・音大生のそこそこ弾ける生徒でも、フラジオレットになると音がかすれる、響かないという場合があります。
これはフラジオレットが出てくる曲に取り組む場合、適当に流していることに原因があります。(小野アンナの教本の段階でも、すでにフラジオレットのスケールは出てきます)
練習のポイントは、まずゆっくりとさらうことです。
サラサーテ、エルンストレベルの曲でも同じで、1の指と小指を指板までしっかり押さえ、音程を確認してから小指を浮かせます。
小指を押さえる→浮かせるの繰り返しで、自分の小指の形(各人で指の腹の肉付きが違うため)にあった力の抜き方を体得することができます。
1の指と弓は浮かないように
小指につられて1の指が一緒に浮いてしまわないこと、弓が浮いてしまわないことに留意しなければなりません。音がかすれる、響かない大きな原因は、この2つにあります。
フラジオレットの音から連想が行くのか、弓を浮かせ気味におっかなびっくり動かす生徒が意外に多いのですが、弓の毛の量の調整はしても、弓自身は弦に密着させ、ある程度のスピードがないと、ピンとした音は作れません。
フラジオレットは高い位置にある音なのですから、音のエネルギーはかなりのものがあることを忘れないようにしましょう。
また、小指を浮かせるのですから、左手は意識的に腕でしっかり支えてやらないと音程が安定しません。
言い換えると、普通に弾いていて左手が「首吊り状態」にあるうちは、フラジオレットもうまく弾けないということです。
フラジオレットのヴィブラートは以上述べたことの延長で(1の指を押さえないフラジオレットの場合はかなり難しいのですが)、いささか強引な言い方をすれば、重音のヴィブラートに類似した動きと言ってよいでしょう。
このとき、1の指を支点に小指がより動くこと、小指は自分が思っているよりも寝かせ気味にすることが肝要です。
取り出し練習の効用
取り出し練習というと、大概は時間の無駄だと思うらしく、通り一遍やるとすぐに速さを元に戻したり、他の箇所に移ってしまったりすることが多いのですが、それこそ時間と労力の無駄というものです。
フラジオレットひとつとっても、徹底的に練習すると弓の重さが良く乗るようになり、音の密度が格段に違ってきます。
これが他のすべての箇所で生きてきます。
「上手いんだけど、音が」という場合は、結局ひとつひとつの徹底した練習が不足しているケースが多いものです。
本番が迫り、焦るときほど、ゆっくり練習の真価は生きてきます。
我慢してこなし続けてきたことは、間際になっても絶対に崩れることがないからです。
photo credit: Enigma Variation number 2 on a theme of Vivaldi via photopin (license)