音大入試を終えたある関係者の総括コメントから。
大学側は、高校・大学の7年一貫教育と捉えている。学部の4年間で教育すると言っても、実際には時間が足りない。
だから音大は音高とちがって、「一生懸命やってます」「よく勉強しました」型の受験生はとらない。
むしろ荒削りでもよいから自分でここまでやった、自分はこういう音楽家としてやっていく、というスタンスが感じられる学生をとる傾向にある。
課題曲にしても途中で時間で切られるわけだが、全体の構成を考えると出だしはこうで、この部分はこう弾く、というのがうかがえる演奏と、とりあえずいいところを見せようと弾き始めて制限時間一杯の頃にはもう限界、という演奏とがある。
聴くほうもプロだから一部を聴いただけでも全体像はわかる。
たとえ普通校からであれ、3年間何をやってきたか、その3年で音大に進んで音楽家になりたいと決心して受けに来ているわけだから、その動機が試験官を納得させるに足る音楽となって出て来ているかどうかが重要だろう。
補足
言うまでもないが、「一生懸命やる」「よく勉強する」が悪いと言っているわけではない。逆に生半可な準備のままに専攻実技試験に臨めば、音階や無伴奏曲(パガニーニやバッハ)で失敗し、芸大なら1次敗退の憂き目に会いかねないのは明らかだろう。
メインの入試課題曲(あるいは2次の課題曲)、つまりピアノ伴奏による協奏曲の演奏においては、努力してきた基盤の上に、さらに音楽家としてやっていくという覚悟やスタンスがどれだけ音となって表れているかが問われるということだろう。
音高からの受験組の演奏が、一般高校からの受験組の気概に溢れた演奏に押されてしまうことが、入試では時折見られるようだ。