私はピアノ、あなたはフォルテな「鬼親」
コンクールがだんだん近づいてきて、曲も仕上がってくると、親が子供のヴァイオリンにピアノ伴奏をつけてあげる時間も多くなります。
そのころに、私の憂鬱は頂点に達してしまいます。
そう、あれが、♪「突然の嵐みたいに」♪ 襲ってくるからなのです。
私も、「カール・フレッシュ スケールシステム」さんと同じ運命にあります。つまり、怒りのはけ口になってしまうということです。
「カール・フレッシュ スケールシステム」さんと異なるのは、彼が楽譜であり、私が打弦楽器であるという点です。
つまり、私は、もともと「叩かれる」運命にあるのです。
そういう定めだから、もちろん、叩かれるのは覚悟の上ではありますが・・・
「あーーっ。全然ダメ!」
と絶叫して、突然、手のひらもろとも、私を強くぶつといったことは、お願いですからお辞めいただけないでしょうか。
弾いていて突然、「できてなーい」と激しく吠えて、イスを思わず蹴飛ばして、イテテ、イテテ、と足が腫れ上がって自業自得状態になったのは、ハッハッハッ、ざまあみろ、って感じなんですが、
痛みが去るやいなや、怒りの矛先を、他でもないこの私にだけ向けて、
鍵盤に、「たあっ」というかけ声と共に、
エルボウ・ドロップを落とすというのは、
一体全体、どういうことなんでしょうか。
このような不条理には、もはやがまんできません。
* このシリーズはすべてフィクションです。