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【芸大入試のリアル】偏差値 “ありえね” 受験常識通じぬ「異界」

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「美校」入試は予備校全盛、浪人率7割

東京・池袋にある「すいどーばた美術学院」。

2019年度の東京芸術大学美術学部合格者数は84名で、5年連続で全国トップ。専攻別でも油画・彫刻・工芸・先端芸術表現で全国第1位と、ダントツの合格実績を誇る。

ところが、そのうちの現役合格者数を見てみると、84名中たったの18名。全体の2割ほどにすぎない。

東京芸大(以下「芸大」)が2019年度受験生向けの「大学案内」で公表しているデータによれば、美術学部の2018年度入学者232名のうち、現役は全体の28.0%、1浪が35.3%、2浪が19.0%、3浪が8.6%、4浪以上が8.2%、その他大検等が0.9%という分布状況になっている。

約7割が浪人で、3浪以上の「多浪」も2割ほどいることになる。

他の国公立大学、例えば東京大学では約7割が現役で3割が浪人。現役が明らかに優勢だ。

芸大入試がいかに「ありえない」特異な世界かがわかるだろう。

芸大美術学部受験生は、現役の時から芸大合格実績をウリにする美術予備校に通い、競争率10倍の超難関に多浪覚悟で挑み続ける。

かくして、芸大美術学部入試は「すいどーばた」、「新美(新宿美術学院)」、「御茶美(御茶の水美術学院)」などの美術予備校が覇権を競い合う、受験産業全盛の状況を呈しているのだ。

「音校」入試は門下・個人レッスン全盛、受験産業不在

芸大美術学部入学者に出身校を問えば、ほぼ全員が高校名ではなく美術予備校名を答えると言われるほど受験産業ドップリ状態のこの「美校」入試に対して、さて芸大のもう一方の入試、「音校」入試はどのような状況に置かれているのだろうか? ※芸大内ではかつての東京美術学校と東京音楽学校の伝統から、美術学部を「美校」、音楽学部を「音校」と呼び習わす。

そこには、「美校」入試とは全く正反対の世界、実質的には受験予備校など皆無の個人レッスンのみの、これも世間一般から見たら「ありえない」世界が展開している。

幼少期からヴァイオリンやピアノの個人レッスンをスタート。芸大あるいは附属の芸高(東京芸術大学音楽学部附属音楽高校)を狙う場合は、ある時期から芸大の教授陣(現・元)あるいは芸大出身の指導者に師事するのが普通だ。

「音校」入試でも、高校の音楽科や一部の音楽専門予備校といった受験対策のための機関が存在するものの、実質的には入試合否の鍵を握る専攻実技の力は、芸大教授陣に連なる門下、いわば「影の機関」において養成されているという現実がある。

無意味な芸大音楽学部の偏差値データ

ほぼ「専攻実技がすべて」の芸大入試。

東大や京大などの一般大学の入試情報を扱う受験予備校が提供している偏差値データは、あくまでもセンター試験(2021年からは共通テスト)や学科試験に関するもの。当然ながら実技重視の芸大入試においては、あってないようなものに等しい。

試しに、「ベネッセ」 が提供している芸大音楽学部の難易度(偏差値)を見てみよう。

音楽環境創造科67、楽理科66、器楽科59、声楽科58、作曲科・指揮科・邦楽科57

音楽環境創造科と楽理科は、センター試験3教科に、個別学力試験で学科や小論文を課し、それらの総合判定で合否が決まるという、一般の大学と似た方式を取っている。(楽理科には聴音書き取り等の実技もあるが)

一方、器楽科などでは、センター試験2教科(国語・英語)を課すものの、個別学力試験は実技のみで、それが重視され、センター試験の成績は最終判定時に用いるのみである。(但し、2020年の募集要項にはセンター試験についてもその年度の基準点が存在し、それを下回った場合は不合格になるとの記述が見られる)

受験産業が提供する偏差値データは、合否調査にセンターリサーチや模試の結果等を加えて算出されるものだが、そもそも個別試験の実技が重視される芸大音楽学部の入試においては、教科の成績のみによって設定されたそのような合否ラインはまったく意味を持たないと言える。

東京芸術大学 (2020年版大学入試シリーズ)

共通テストでも6割確保が目安か?

とはいえ、やはり気になるのは、芸大音楽学部志望者はセンター試験で一体何点くらい取っているのか、という点だろう。
※2021年1月から、センター試験に代わって大学入学共通テストが実施されるが、ここでは過去のデータ蓄積があるセンター試験の得点率を概観しつつ、共通テストの得点率を予想してみることにする。

以下「受験サプリ」 が提供するセンター得点率のデータを見てみよう。※2019度入試用/ 河合塾提供のデータ

音楽環境創造科84%、楽理科77%、作曲科75%、指揮科65%、邦楽科65%、器楽科64%、声楽科58%

データ自体があったとしても、わずかな数に違いないが、音環と楽理以外の科では、合格可能性が50%であるセンター試験の得点率は、ほぼ6割〜6割5分程度と推定される。(収集データが少ないので、センター試験が突出してできた人がいた年は、一部の科では得点率が跳ね上がるという現象が生じがちだ)

以上より共通テストでも同じくらいの得点率が想定できるだろう。

無論、共通テストで6割以上、さらには7割・8割取ったところで、実技重視の芸大入試の合否に決定的な意味を持つことはないが、一方で2割・3割しか取れなかった場合は、最終判定に向けて安穏としていられなくなることはわかる。

次回から、集められ得る限りの公表データを用い、また受験経験者の口承伝承の記録も参考にしつつ、さらに深く芸大入試のリアル(現実)に迫っていく。

シリーズ【芸大入試のリアル】

【芸大入試のリアル②】「現実倍率」と「黒ひげ危機一髪」

【芸大入試のリアル③】専攻実技 4つの“常ならぬ事態”

『最後の秘境 東京藝大-天才たちのカオスな日常-』(新潮社)がコミック化

芸大生自身にとってはいたって普通、しかし世間から見たら秘境としか言いようがない世界。それを目の当たりにすれば、一般の読者は驚き、あきれ、でも最後はその真剣な姿に心を打たれるに違いない。

著者の二宮敦人氏はミステリー作家、奥さんは現役の「美校生」(東京芸大美術学部彫刻科)。

深夜に半紙で自分の型をとったり、芸大の生協で買ったというガスマスクをキッチンにポンと置くわが妻…

奥さんに導かれるように、謎の秘境に足を踏み入れる著者。「美校」と「音校」の全学科の学生にインタヴューを敢行し、彼らの制作・演奏現場にも潜入した。

そんなベストセラー書籍がついにコミックで登場!


最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常 1巻: バンチコミックス


最後の秘境 東京藝大 2: 天才たちのカオスな日常 (BUNCH COMICS)


最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常

  • コメント ( 1 )
  • トラックバック ( 1 )
  1. kohji 様
    コメントありがとうございます。
    過去10年のエチュードと協奏曲については、こちらの記事に掲載致しましたが、それ以上のデータについては残念ながら持ち合わせておりません。宜しくお願い申し上げます。

    http://violinear.com/h27-geiko-entrance-exam-release/

  1. […] このサイトにもあるように、東京芸大の場合は実技が全てであり、非常に高いレベルが求められるので十分快挙だと考えられます。 […]

 ヴュータンは壮大なスタイルで書きました。その音楽はどこをとっても豊かでよく響くものです。自分のヴァイオリンをよく鳴らそうと思うなら必ずヴュータンを弾いてほしいですね。

ウジェーヌ・イザイ(List

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