「第69回(2015年)全日本学生音楽コンクール」バイオリン部門・東京大会・小学校の部は、サントリーホール ブルーローズで、10月18日に本選が行われた。
本選課題曲は、ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 第1楽章であった。
“学コン初参加” の小4が2年連続で第1位
8月24日・25日に東京オペラシティ リサイタルホールで行われた予選には、93名がエントリーし、21名が本選に駒を進めた。(昨年はエントリー84名、本選進出17名。一昨年はエントリー65名、本選進出19名)
本選進出21名のうち、“学コン初参加” となる小学校4年生のコンテスタントは6名。昨年も6名だった。
それ以前の小4の本選進出者は1~3名程度。昨年も指摘した「小4ニューパワー」の台頭を裏付ける結果となった。
若年段階で技術的頂点に至る例が珍しくないヴァイオリンでは、1~2年程度の学齢の違いにさほどの意味はないとも考えうる。
しかしながら、とりわけ低学年段階で上位実力者の厚い層が確実に形成されつつある事実は、国際コンクールで韓国勢に押され気味の日本の弦楽界にとっては明るい材料だ。各指導者の優れた指導力の賜物と言えるだろう。
本選の結果にも、それは如実に現われていた。
昨年は東京大会において1972年以来、実に42年ぶりに、小4が第1位と第2位を占める快挙に沸いたが、今年も2年連続で小4が第1位に輝いた。
そして昨年の「小4ニューパワー」入賞者の2名が、第2位と第3位を獲得した。
一方で、コンテスタント間の実力差は僅差だったことが推定され、第1位から奨励賞までの入賞者は、2005年以来10年ぶりに7名出た。(2005~2014年は5~6名で推移)
「コンクール経験」で一日の長
かつて、ヴィエニャフスキの協奏曲2番は小学校の部では難曲と位置付けられ、これが本選曲になった年は、参加者が明らかに減る傾向が見受けられたが、もはや近年はそんなことはなくなった。
ロマン派の抒情の表情豊かな歌わせ方、ワンボウ等の技術の完成度、最後まで切れることのない集中力と演奏体力。
どれをとっても極めて水準の高い演奏が展開される中、学コンのみならず他の複数のコンクールで着実に入賞実績を積み重ねてきたコンテスタントの演奏からは、安定と洗練を多く聴き取ることができたように思う。
学コン本選では採点結果は公表されないが、過去の全国大会の採点結果に現われているように、多面的な見方が可能で優劣つけ難いはずの演奏に、点数はいとも簡単に差をつけてしまう。
その点差が比較優位を結論付け、賞が決まるシステムになっている。
これがコンクールというものの悲しい現実だが、学コンを含め、受けたコンクールでの入賞経験もさることながら、当日の演奏を審査結果とは切り離して、いろいろな角度から自分なりに冷静に分析する習慣を身につけることには意義があると思う。
結果をきちんと受け止めるメンタリティを
コンクールの結果と真摯に向き合い、ミスや問題点を逐一振り返る。
入賞希望が潰えた点では「終わった事」だが、演奏が不完全であった点にはおいては、決して「終わった事」にはしない。
容易にできることではないが、他の人がやりたがらないこと、避けて通ることを、きちんと行うことによって、初めてコンクール経験は糧となり得る。
コンクール直後に、問題点をメモに残し、機会ある毎に見返す。
まずはそれを実践してみよう。
下を向かず、常に上を目指すメンタリティを鍛えていく作業は、演奏技術の向上と共に、今後のコンクール人生の扉を開く重要な鍵となるはずだ。
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