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ウクライナに思いを寄せて-バティアシュヴィリのレクイエム

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日本政府が、「グルジア」の呼称を来年から「ジョージア」に変更する検討を始めたというニュースが報道された。

「国名表記「ジョージア」へ=グルジアの変更要請受け-政府」(10月19日付「時事ドットコム」)

同国では2008年の分離独立を巡るロシアとの紛争(「南オセチア紛争」)で、ロシアへの国民感情が悪化、ロシア語起源の「グルジア」から英語表記の「ジョージア」への呼称変更を各国政府に働きかけており、その要請を受けての今回の日本政府の対応となったようだ。

ジョージア出身の音楽家と言えば、まず思い浮かぶのがリサ・バティアシュヴィリである。

ジョージアのトビリシに生まれ、11歳の時に一家でドイツ・ミュンヘンに移住。アナ・チュマチェンコに師事し、1995年に史上最年少の16歳で「シベリウス国際ヴァイオリンコンクール」で第2位となった。(この史上最年少入賞記録は、2000年に同コンクールを15歳で制覇し優勝したセルゲイ・ハチャトゥリアンによって破られている)

現在、欧米のオーケストラから引く手あまたのバティアシュヴィリは、2012~13年シーズンにはシュターツカペレ・ドレスデンとケルンWDR響の、2014~15年シーズンにはニューヨーク・フィルハーモニックのレジデンス・アーティストを務めている。

そんな彼女が、ロシアの軍事介入に揺れるウクライナ問題について、音楽家として静かな態度表明を行い、注目を集めている。

8月31日、バティアシュヴィリはフィンランドのヘルシンキで行われた平和コンサート “We agree to disagree”(意見の違いを認め合おう) に出演し、ジョージアの作曲家イゴール・ロボダ(Igor Loboda)の「ウクライナのためのレクイエム2014」を演奏した。

そして、「民主主義と自由と子供たちのためのより良き未来を得るために闘っている民族と国家を蹂躙し辱める行いは正しくありません」と穏やかながら強い表現で聴衆に語りかけた。

2008年に起こったロシアとジョージアの「南オセチア紛争」は、ジョージア国内の非政府支配地域の独立を巡ってのものであり、今回のウクライナ問題と状況がよく似ている。

それは、分離され戦火にさらされた祖国ジョージアの運命とウクライナの運命とが二重写しになって、衝き動かされるように思いを吐露した発言だった。

そして9月13日、彼女はさらなる行動に出る。

オランダのロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の 「ゲルギエフ・フェスティバル」

バティアシュヴィリはヴァレーリ・ゲルギエフ指揮の同管弦楽団とプロコフィエフ:協奏曲第1番を共演した後、アンコールに「ウクライナのためのレクイエム」を演奏したのだ。

ゲルギエフはロシアのプーチン大統領の盟友として知られており、2008年の「南オセチア紛争」ではジョージア政府を非難し、ロシアを擁護する発言を行っている。

「アンコールは誰かのために演奏したい」と語る彼女は、ニューヨークのラジオ局 “WQXR” のインタビュー に次のように答えている。

「ゲルギエフの指揮で共演した後、『ウクライナのためのレクイエム』を演奏する。それがウクライナへの連帯を表す私なりの方法でした。」

「このフェスティバルへの出演オファーは1年半前にありました。出演していいのかどうか、かなり悩みました。ウクライナとロシアのことではなく、ジョージアで起こったことがあったからです。その出来事は私自身と決して無縁には思えず、見過ごすことができなかったのです。でも、出演することに決めました。出演して、言葉ではなく自分にできることで聴衆に訴えかけようと心に決めたのです。」

「音楽は侵略的なものとは一切相容れない、最も平和な言語です。しかし同時にそれは私たち音楽家に、私たちなりの意見を、知性でなく感情に発する意見を表明する自由を与えてくれるものでもあります。」

ヴィルトゥオーゾ性と共に、深く研ぎ澄まされた感性が聴衆の心を捉えて離さない彼女の演奏。

それは、音楽が与えてくれる自由の意味を徹底的に追究することを通して生みだされているものに違いない。

付記

8月にドイツ・グラモフォンから バッハの新録音 がリリースされた。

故郷のトビリシで撮影されたプロモーションビデオ。バッハ:カンタータ第156番《わが片足は墓穴にありて》ヘ長調 BWV156~シンフォニアより。

photo by Roberto Strauss

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 弦だとか弓の毛だとか、そんなことを意識しているようじゃだめなんだ。ヴァイオリンは弾くものじゃなく、歌うものだ。

レオポルド・アウアー(List

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