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「ウクライナのためのレクイエム」を聴いた指揮者ゲルギエフは

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音楽による静かな態度表明

2014年9月、オランダのロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の 「ゲルギエフ・フェスティバル」。

リサ・バティアシュヴィリは、ヴァレーリ・ゲルギエフ指揮の同管弦楽団とプロコフィエフ:協奏曲第1番を共演した。

アンコールに応えてバティアシュヴィリが演奏したのは、ウクライナ紛争に寄せて作曲された「ウクライナのためのレクイエム2014」だった。

バティアシュヴィリの祖国ジョージアは、かつてロシアが介入した「南オセチア紛争」で戦火にさらされたことがある。現在進行中のウクライナ紛争は彼女にとっては決して他人事とは思えず、ずっと心を痛めていた。

指揮者のゲルギエフは、クリミアのロシアへの併合を支持し、「南オセチア紛争」ではジョージア政府を非難しロシアを擁護した。ロシアのプーチン大統領の盟友だ。

私は、プーチン氏を支持する彼の立場に実際には反対していながら、何も言葉を発しないでいる音楽家社会の一員でいたくはありません。

このフェスティバルへの招待を受けるかどうか悩んだ末に出演を決意したバティアシュヴィリは、演奏家として音楽で聴衆に訴えかける特別な方法を選ぶことにしたのだ。

ウクライナに思いを寄せて-バティアシュヴィリのレクイエム(「ヴァイオリニア」)

この時のバティアシュヴィリのアンコール演奏はどのようなものだったのか。ゲルギエフはその演奏に対してどのような反応を示したのか。

「ニューヨークタイムズ」の記事 に掲載されたバティアシュヴィリ自身と関係者へのインタヴューから、その時の様子が一部明らかになった。

ゲルギエフは “ポーカー・フェース”

協奏曲の演奏が終わった後、バティアシュヴィリはアンコールに応えて、ジョージアの作曲家イゴール・ロボダ(Igor Loboda)の「ウクライナのためのレクイエム2014」を、指揮者のゲルギエフの横で演奏した。

オケの首席フルート奏者で、バティアシュヴィリの友人でもあるジュリエッタ・フレル(Juliette Hurel)は、その時の様子をこう振り返る。

とても感動的な演奏で、ホールは深い沈黙に包まれました。演奏する前に聴衆に語りかける時、彼女はとても感情が高ぶっているようでした。深呼吸をする様子が見て取れました。終演後、彼女に「あなたの勇気、素晴らしかったわ」と声をかけました。

コンサートの後、ゲルギエフは何事もなかったかのように “ポーカー・フェース”で、バティアシュヴィリを夕食に招待した。

夕食の席では、リラックスした感じで、友人に囲まれ、いろいろな話をしたゲルギエフは、バティアシュヴィリに、次は自分が音楽監督を務めるマリインスキー劇場管弦楽団と共演して欲しいと招待を申し出た。

ロシアでは一切演奏はしないと心に誓っているバティアシュヴィリの態度は明らかだった。

私は彼に面と向かってノーとは言いませんでした。2日後、エージェントを通して、ご招待はお受けできないと返答しました。

リサには一点の曇りもない

自身もロシアでの演奏を断った経験があるジョージア出身のピアニスト、ニノ・グヴェタゼ(Nino Gvetadze)は、バティアシュヴィリは音楽家のロールモデルだと言う。

私たち音楽家の周囲には、あれこれアドバイスしてくれるエージェントや興行主がいて、コンサート契約を断るのはとても困難な場合があります。でも、それは自分がどのようにしてキャリアを築いていきたいのか、自分の理想を犠牲にしてでもキャリアの階段を上っていきたいと思っているのかどうかにかかっています。リサはその選択において、一点の曇りもないのです。

個人として、また、プロフェッショナルな演奏家として、今後もリサ・バティアシュヴィリは逃げることなく真摯に「政治」と向き合い続けることだろう。

photo credit: Steve Snodgrass via photopin cc

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 弦だとか弓の毛だとか、そんなことを意識しているようじゃだめなんだ。ヴァイオリンは弾くものじゃなく、歌うものだ。

レオポルド・アウアー(List

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