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コンマスが弾き比べ 「ウィーン・フィル」その独自の音の秘密

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団員の実演動画を交え、楽器とスタイルを解説

2014年7月30日付の「ニューヨークタイムズ」紙に、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の独自の音の秘密に迫る特集記事が掲載された。ウィーン・フィル団員が演奏の実例を示す動画もあり、とても興味深い内容だ。

「時と楽器により形作られた音 ウィーン・フィルはなぜ独特なのか?“A Sound Shaped by Time and Tools What Makes the Vienna Philharmonic So Distinctive”

なぜウィーン・フィルの音は、他のオーケストラと異なった独特なものであるのか。時に「ビロードのような、温かく、豊かで、贅沢な」と形容されるウィーン・フィル サウンドの秘密を、同記事ではウィーンフィルが他のオケにない特別な楽器を使っている点、そして代々受け継がれてきた演奏スタイルの2点に求めている。

楽器の例として挙げられたのは、ホルンとオーボエ。

現在、一般のオケで使用されるホルンの主流は、フレンチ・ホルンのうち2種類の調性(F と B♭)を切り替えられる「ダブル・ホルン」だが、ウィーン・フィルは伝統的に「ウィンナ・ホルン」(F管シングルホルン)を使用している。

「ウィンナ・ホルン」は、不安定で音が割れる危険がある一方で、容易にフォルティッシモの音を出せ、大きな音でもオケの音を損なうことはなく、他の管楽器とよくブレンドするという。

“Wolfgang Vladar demonstrates the “round” sound of the Viennese horn”

また、オーボエだが、ウィーン・フィルが使うのは、通常のオーボエよりも長さが短く、フィンガリングも異なる「ウィンナ・オーボエ」である。

くっきりとした明瞭な音で、ヴィブラートがやや少なく、ピッチの揺らぎがある。

それが独特のウィーン風を醸し出すという。

“Clemens Horak and Stuart Breczinski demonstrate the distinct sound of the Viennese oboe used by the Vienna Philharmonic”

そして、同じ音楽院の同じ先生の下で訓練された奏者らによって代々受け継がれてきた独特の演奏スタイルの例として挙げられたのは、「ウィンナ・ワルツ」のテンポだ。

ライナー・ホーネック氏がワルツのテンポを弾き比べ

ウィーン・フィルのワルツのテンポは、通常の 1-2-3 ではなく、1-2 …3 と、2拍目を突っ込み気味に、3拍目を「ややためらいがちに」弾く。

ウィーン・フィル在籍33年のコンサートマスター ライナー・ホーネック氏が、通常のスタイルとウィーン・フィルのスタイルでワルツを弾き比べている。

“Rainer Honeck, a concertmaster in the Vienna Philharmonic, plays an excerpt of music in two different ways. First, in its strict three-quarters time — as written. Then, in the Viennese style.”

優美で軽快な舞踏シーンが浮かんでくるようだ。

「躊躇がまた美しいのです」

とライナー・ホーネック氏はそう表現する。

「ウィーン・フィル サウンド」は人間の声に近い

10年以上前になるが、ウィーン・フィルと他のオーケストラの演奏を聴かせて、ウィーン・フィルの音を識別できるかどうかの実験が行われたことがあった。

実験では、音楽家と音楽愛好家1000人に、ウイーン・フィル、ベルリン・フィル、ニューヨーク・フィルが演奏する有名な楽曲の録音の断片を聞かせて、どれがウィーン・フィルの演奏かを尋ねた。

実験結果のデータは、明らかに「ウィーン・フィル サウンド」の存在を示すものだった。

中でも興味深かったのは、一番容易に「ウィーン・フィル サウンド」だと分かったのが、マーラーの5番だった一方で、多くの被験者がレナード・バーンスタイン指揮のニューヨーク・フィルのマーラー1番で間違いを犯したことだった。

多くの人が、それを実際のウィーン・フィルが演奏するもの以上に、ウィーン・フィル的な音と判断してしまったというのだ。

これはレナード・バーンスタインがウィーン・フィルのマーラーにどのような影響を与えたかを示している。

ウィーン・フィルは、ウィーン国立歌劇場管弦楽団のメンバーによって構成される、音楽監督や首席指揮者を置かない自治独立組織であり、指揮者はウィーン・フィルのメンバー自身が選ぶ。

主導権はあくまでも団員側にあり、従って1人の指揮者が彼らの音に過剰に影響を与えることはないのだ。

ウィーン・フィルの前楽団長(※注)で、第1ヴァイオリンのクレメンス・ヘルスべルク氏が、「ウィーン・フィル サウンド」形成の秘密を解き明かす興味深い事実に触れている。

「歌劇場でも演奏しているということが、音の形成にとても大きな影響を与えていると言っていいでしょう。我々は最も自然な楽器である人間の声に常に相対しているのです。そのことによって、我々は歌手と共に呼吸することを余儀なくされます。アーティキュレーションもフレージングも、人間の声と同じようになるのです。」

※注
ウィーン・フィルは、2014年9月に幹部を刷新し、17年間にわたって楽団長を務めてきたクレメンス・ヘルスべルク氏が退任し、新たにアンドレアス・グロースバウアー氏(第1ヴァイオリン)が楽団長に就任した。

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 ヴュータンは壮大なスタイルで書きました。その音楽はどこをとっても豊かでよく響くものです。自分のヴァイオリンをよく鳴らそうと思うなら必ずヴュータンを弾いてほしいですね。

ウジェーヌ・イザイ(List

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