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なぜライブ録音は「よく」聴こえるのか?

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聴衆の存在が演奏の質を向上させる

聴衆のいないスタジオでのソロ演奏よりも、聴衆のいるライブ演奏のほうが、演奏の質を向上させ、多くの人を感動させることができる。

そんな興味深い実験結果を示した日本人研究者の論文が、スイスの専門誌に発表され、その後、“Pacific Standard”“The Strad” 等、欧米のメディアでも紹介されて話題となっている。

論文を発表したのは、正田悠氏(日本学術振興会特別研究員 (PD) 同志社大学文化情報学部)と安達真由美氏(北海道大学大学院 文学研究科 教授)。

研究ではまず、13人のピアニストに、それぞれシューマンのトロイメライを聴衆のいる場合といない場合の2つのシチュエーションで演奏してもらい、これを録音して153人のリスナーに聴かせる実験を行った。

すると、リスナーの大部分は聴衆のいるライブのほうが良い演奏だったと答えたという。(ライブ演奏はライブであることがわからないよう聴衆が発する雑音等を排除して注意深く録音された)

聴衆の存在は演奏者を緊張させ、集中力を削ぎ、雑音が起こる不安を与えるように思われるが、実際にはライブではむしろ聴衆が演奏の質を向上させるファシリテイター(促進役)となったことを実験結果は示している。

ライブ演奏では表現のヴァリエーションを「平均化」

次に13人のピアニストの演奏を分析し、ライブとソロでの強弱・テンポ表現を比較したところ、ライブでは強弱やテンポの違いをあまり際立たせず、表現のヴァリエーションを抑えて「平均化」する傾向が見られたという。

ライブではソロの自由気ままさよりも、よりコントロールされた演奏がなされ、そんな平均的な演奏がリスナーに感動を与え、好まれる結果となったのだ。

ありふれたものを好む多くの人の心理は、人気のあるポップスが洗練され過ぎず、分かり易いもの(平均的な顔・声・メロディー)に依拠していることからも説明できる。

あるいはこの実験が、控えめな感情表現が尊重される日本でなされたからという文化的側面に理由の一端を求めることができるかもしれない。

一方、経験のあるリスナー(少なくとも16年間専門の音楽教育を受けた人)の場合は、平均的な表現よりも並外れてダイナミックな表現の方に心を動かされる傾向が見られたという。

「どのような演奏を良質と感じるかは、文化、専門性、場所など様々な要因によって変わってきます。私はピアノを弾きますが、クラシック音楽でもその場で即興的な演奏をすることがあります。即興はライブ演奏をより魅力的なものにするのではないかと思っています。」(正田悠氏  “Pacific Standard” のインタヴューより)

論文
“Why live recording sounds better: a case study of Schumann’s Träumerei”(「なぜライブ録音はよく聴こえるのか? シューマン:トロイメライの事例研究」)

photo by de:Benutzer:Janekpfeifer

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 ヴュータンは壮大なスタイルで書きました。その音楽はどこをとっても豊かでよく響くものです。自分のヴァイオリンをよく鳴らそうと思うなら必ずヴュータンを弾いてほしいですね。

ウジェーヌ・イザイ(List

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