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ある楽器工房主のひとり言

20_Atelier_dun_luthier_(1),_Mirecourt,_2013

耳元で鳴る楽器を安易に選ぶべからず

まあそうですなあ、今頃は夏秋のコンクール受けようか、音高行こかいうお子さん方が、楽器替えに来られる季節ですけれども。

それにしても、今日びの親御さんたちは皆さん金持ちにならはった。猫も杓子もオールドオールドで、年代が古いだけで二百万三百万ぽんと上乗せされて。そうかと思えば「この子が気に入った楽器やからそれが一番」とおっしゃる。

今ではもう滅多と使わんようになりましたが、「豚児」いう言葉がありましたな。親なら自分の子は可愛い、可愛いが他人様から見たならそれはそこらの豚の子と変わらんやろう、この大人の弁えが今は無うなったんと違いますか。

私らから見たらまあ、豚「児」やなくて豚「耳」ですな。少しは指が回るかしれませんが、一人前の楽器をまっとうに鳴らしたこともない十か十二ばかりの子が、これはいい、あれは駄目、言うのを親御さんは目え細めて眺めておられて。

まあ、信用できるとこでそれなりの値段の範疇で選べば、まず間違いはないはずですけど、子供は大概が耳元で鳴る楽器をええ楽器や思てますから、その気になったら行き場失くして困ってる楽器を売りつけるくらいは簡単なことですなあ。

それはオールドは木が枯れてますから鳴り易い、それでもそれは本人の力で鳴らしてるのやない。ましてや古くて鳴れば売れる、いうんで板削って細工して、そんな楽器をつかまされて、いざ買い換えよう思たら二束三文で引き取ってもらうしかない、そういうお客さんをどんだけ見てきましたか。「振り込め詐欺」が流行るわけですわ。

楽器は「先生」

趣味でするんならまあ、気に入ったものを弾けば宜しいと思います。他人様にお金頂いてステージに立つんでもなし、耳元で鳴って弾いてる本人がええ気持ちになればそれでええんやし。

プロになったら、豚耳もそれなりになおってますから「気に入った」いうてもその言葉の意味が違いますわな。それをこれから修行して人間になろういう豚児が、楽して音出そう、てまあ何処でそんな考え吹き込まれてこられたんですかなあ。

若いうちは楽器を先生にして、長いことかけて技術磨いて思い通りに鳴らせるように持って行く、楽器に教えてもらう、それがお金貰ってステージに立とういう人間の務めや、思うてここまできましたが、今日びの親御さんたちには通じんようになりましたなあ。子供の好みが第一で音楽なんやから楽しく、なんでわざわざ進んで苦しいこと辛いことせんならん、と。

まあ、わたしとこは家土地自分のもんですし、子供は後継がん言うてますから好き勝手やらせて貰うて、それでも気心知れたお客さんだけで充分やってますから有り難い事ですわ。

いい楽器は自然と寄って来る

長い間見てますと、何十軒とへめぐり歩いても決まらん人と、いっぺんですっと決まる人と、ありますなあ。ほいでもって選んだ楽器見てますと、結局のところは弾く子に丁度見合った楽器を選んでるんですなあ、これが。

ですからこちらももう、若い頃のようにやいのやいの言わなくなってきましたなあ。上手くなったらいい楽器も自然 と寄って来るもんですし。

なかにはこっちが出す楽器を黙って持っていって、四苦八苦してる子も居って、そういう子ならこちらも何とか都合して聴きに行って、ここまで来たなら次はこれ、いうて金庫開けて算段する気にもなり、それがまあ、今のわたしの道楽ですかなあ。

まあ、親御さんは子供さんの為に金遣いたい遣いたい、思てその一心で来られるわけですからあんまり水差すようなこと言うてもね。楽しく買い物したい方にはそれ用の処があるわけですから、まあ、縁無き衆生は度し難し、いうのが正直なところですなあ。

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photo by Anthony V

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  1. 匿名の投稿者の方へ
    この記事は「neko 語録」のひとつです。「neko 語録」の来歴、掲載の趣旨については、「『neko 語録』とは?」をご参照頂ければ幸いです。
    neko 先生は時に奇をてらう内容で書かれることもあり、この記事もフィクショナルな味付けがあるかと思われます。実在の工房主のご意見ではないとしても、「耳元で鳴る楽器を選ばない」「楽器は先生」などの警句には、耳を傾けてよい側面があるのではないかと考えております。記事が書かれた当時も、「参考になった」とのご意見がいくつもあったと記憶しております。

 弦だとか弓の毛だとか、そんなことを意識しているようじゃだめなんだ。ヴァイオリンは弾くものじゃなく、歌うものだ。

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