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続)正しく弾いても予選落ち?-「学生音コン」小学校の審査傾向

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正統を逸脱したような予選通過者が出るのは小学校の部の特徴です。教授陣の間でも、「まあね、いいじゃないの」といった受け止め方が大半です。

楽譜無視の演奏がまかり通るのはお子ちゃまの間だけ、との共通認識があるからです。

そこを狙った振り付けがあることは理解しておりますが、あえてその真似をせずとも通る子は通ります。

「正確に」「楽譜通りに」弾いても、合格点を得られるとは限らない

そのうえで、あえて愚見を付け加えるとすれば、コンクールは相対評価であって絶対評価ではない、音程が正確で、音色が綺麗で、楽譜どおりに弾けばそれで合格点がもらえるわけではないということです。

この点を小学校から大人までコンクールに参加する本人とその関係者は頭に入れておく必要があります。

予選の参加者は八十人から百人もいます。それなりの指導者に師事し、普段なら水準以上に「弾ける子」ばかりです。

その「弾ける子」が本番のステージで緊張の余り音をはずす、萎縮してヴィヴラートがかからなくなる、そこを乗り越えて普段どおり、あるいは実力以上の演奏をする、これはこれで立派なことです。

しかし、演奏が単に音楽的に正しく音程が正確で音色が綺麗なだけでは、「だからどうしたの?別に」「印象ないなあ」です。

むしろ「自分が聴こえてくる演奏」が評価される場合も

本人や関係者からすれば「あんなに上手くいったのに」「ノーミスで弾いたのに」と思うでしょうが、ホールの後ろの審査員席では八十人から百人中のひとりに過ぎません。

楽譜に正確に弾いたからというのは発表会では通用しても、審査員は「正しい演奏」はそれこそあくびが出るほど接しているわけですから、正統で通すならテクニック・解釈ともに「ここまでやられたら落とすわけには行かない」ところまで詰める必要があります。

それを指導した通りに本番のステージで弾くためには生半可な力量では無理で、本人の基礎と体力と家庭の協力が必須となります。

そこまで届かない演奏は「詰まらないね」「退屈」「無難」「平凡」、逆に光るのは「先生がこう弾けと言ったから」ではなくて、「この音いいでしょう、このフレーズいいでしょう」「ボク、この出だし好き、この終わり方も」と本人の気持ちが音になって訴えかけてくる演奏です。

正直申し上げて弾き手の「自分」が聴こえてくる演奏は非常に少ない、それが聴こえてきたとき、多少の音の汚さ、音程のあいまいさを補って、「大人の手がありありと見える単に弾かされている演奏」を超えた評価が与えられる場合がある、ということです。

現段階の「美しい音」は作った音ではない

特に小学生の場合は個人差も大きく、個人の努力というよりは体の大きさ、器用さなど生まれつきの資質に左右されるところが非常に大きいと言えます。

音が綺麗といっても、この段階ではそれは美男美女に生まれついたと同じく素のままのものであって、一音一音音を作っているわけではありません。

そのあたりの見極めができずにちょっと器用だから、音が綺麗だからと無理をさせると道を踏み迷うことがあります。

自戒を込めて記す次第です。

補足

「2004年(第58回)全日本学生音楽コンクール」小学校の部・予選曲は、クライスラー:コレルリの主題による変奏曲だった。

この予選の審査結果が出た直後から、「正確に楽譜通りに弾いた演奏が予選に落ち、音程も不安定で音も汚い演奏が予選を通ったのはおかしい」等のコメントが相次ぎ、掲示板上でホットな議論が巻き起こった。

neko 先生がそれに答えたのが上記の投稿である。

近年、「学生音コン」の小学校の部の予選では、バッハの無伴奏パルティータ3番やローデのカプリース、ドントの練習曲等が継続して課題曲となってきた。

無伴奏曲だけに、伴奏のある曲に比して、音程や音の出し方、様式感などへの審査の眼は厳しくなっており、出場者側でもその対策が進んできているので、ここで neko 先生が言っている正統をはずれた個性的な演奏を評価する傾向が、現在でも尚、続いているかどうかについては議論の余地があろう。

その点は割り引くとしても、「自分が聞こえてくる演奏」、「本人の気持ちが音になって訴えかけてくる演奏」は、奏者の相対評価の場であるコンクールにおいては、特に重要となってくるのは言うまでもない。

正統プラスアルファのそのような要素が必要であることは、中学校の部や高校の部でも同様だろう。

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photo credit: carterse via photopin cc

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 ヴュータンは壮大なスタイルで書きました。その音楽はどこをとっても豊かでよく響くものです。自分のヴァイオリンをよく鳴らそうと思うなら必ずヴュータンを弾いてほしいですね。

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