鏡よ、鏡よ、鏡さん
よく、泣き顔で、私の前に立って、姿勢や弓の動きをチェックしてるわ。
だいたい、激しく叱られた後に、
「幼稚園児じゃあるまいし」
「ヴァイオリン習い始めて1週間目に教えてもらったことが、5年経っても、まだできていないじゃない」
「才能ゼロ!」
なんていう止めの一言があって、本人が大泣きに泣く。涙が乾いたあとで、演奏フォームのチェックをしろとのお達しを受けて、私の前にやってくるっていうのがパターンね。
そりゃあ、もう、赤く泣きはらした顔で、鼻汁まで飛び出しちゃって。ヴァイオリンには、よだれと涙の後がベットリくっついて、悲惨な状態。
ほんと、見てられないわ。
だから、魔法の鏡にでもなって、「この世で一番ヴァイオリンがうまいのはあなた」 なんて言ってあげたいくらい。
* このシリーズはすべてフィクションです。
- 【証言記録】 ヴァイオリン「鬼親」伝説-プロローグ
- 【鬼親①】 居たたまれない郵便配達員の “証言”
- 【鬼親②】 伴奏ピアニストは知っている
- 【鬼親③】 ピアノと “格闘” フォルテな「鬼親」の真実
- 【鬼親④】 カール3世の「悲劇」
- 【鬼親⑥】 あの偉人も “証言” : 「鬼親」家の現状
- 【鬼親⑦】 左手を強化するための仰天のトレーニング法とは?
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