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【芸大入試のリアル②】「現実倍率」と「黒ひげ危機一髪」

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もうひとつの倍率の存在

東京芸大入試情報サイト によれば、平成28年(2016年)度の東京芸大器楽科の入試結果は以下の通りであった。

 募集人員: 98名  志願者: 412名  受験者: 405名  合格者: 102名

受験者数÷合格者数の「実質倍率」は、3.9倍である。

しかしながら芸大器楽科入試においては、芸大附属高校(芸高)出身者以外の学生(以下、外部生)にとって、この「実質倍李」よりさらに現実に近い入試競争率を示す、もうひとつの倍率が存在する事実を指摘しておかなければならない。

それは、芸高生の合格率が外部生の合格率より高く推移しているという過去の経験則を踏まえた上で算出される、外部生にとっての現実的な難易度を示す倍率である。

ここではそれを「現実倍率」と呼ぶことにしよう。

芸高の公式サイト には、各年度の芸高生の芸大受験結果が公表されている。

平成28年(2016年)度については、芸高生は現役39名が芸大を受験して、合格者は35名だった。

つまり芸高生内での「実質倍率」は約1.1倍。過去5年間とも、ほぼ1.1倍で推移している。40名ほどが受けて、2~4名が不合格になるパターンが続いている。

芸大入試よりも難関と言われる芸高入試を突破したのに、それでも3~4名が芸大を不合格になってしまうというのは、芸高生にとっては考えたくない「不都合な真実」であるが、外部生にとってはそれ以上に、芸高生の合格率の高さが厳然と存在することを思い知らされるデータである。

つまり、この「芸高枠」を取り除いて考えないと、外部生にとっての適正な競争倍率は出てこないことになる。

「実質倍率」3.9倍⇒「現実倍率」5.1倍

ところで、この39名の受験者のうち、器楽専攻者は何名くらいいるのだろうか。

平成26年度の芸高入試の結果 が手元にある。

芸高の公式サイトに入試期間のみ限定で公開される情報だが、これによれば、平成26年度入試における器楽専攻者以外(作曲専攻と邦楽専攻)は6名だった。

そこで、例年6名程度の非器楽専攻者がおり、彼らの芸大合格率が100%だと仮定した場合、平成28年度の芸高生39名のうち、器楽専攻者は33名、そのうちの合格者は概ね29名程度という推計値が得られることになる。

推定値であるが、さほど現実から遠い数字ではないだろう。

すると、平成28年度器楽科の外部生にとっての「現実倍率」は、受験者372名(全体405名-芸高33名)、合格者73名(全体102名-芸高29名)より、5.1倍だったことになる。※注)芸高の過年度卒業の受験生の合格率は推計に加味していない

無論、管楽器では年度によって芸高生がいないパートもあり、倍率の持つ意味は楽器によって異なってくるが、受験者の多いヴァイオリンやピアノではこの倍率が持つ意味は小さくはない。

ヴァイオリンの場合、20名ほどの芸大合格者のほぼ半数は「芸高枠」と考えておくべきだろう。

まとめ

外部生は「実質倍率」を1.2~1.3ポイントあげた「現実倍率」を想定しておく。

孤高を行く外部生、「黒ひげ危機一髪」状態の芸高生

外部生が感じる「芸高の壁」は、倍率だけに留まらない。

実技試験の会場は芸大で、芸高生にとっては「ホーム」、外部生にとっては完全「アウェー」となる。試験官は芸大弦楽専攻の教官らで、高校での実技レッスンや試験で芸高生にとってはお馴染み。気持ち的に「ホーム」というのは強みとなる。

「私ら芸高生」というプライドも加わって、「同調行動を取りがちな」(俗な言葉で「つるみがちな」)芸高生を横目に、外部生は孤高を貫かねばならない。実技試験が1次、2次と進行するにつれて、当然ながら受験生に占める芸高生率は高まっていく。

首都圏なら、高校は違えど、同じ門下だったり、「学生音コン」や他のコンクールで顔馴染みだったりと、言葉を交わせる芸高生は見つかるかもしれないが、それ以外の地域から来た外部生にはそれもなかなか難しくなる。

一方、芸高生も、「ホーム」での戦いに気を緩めている場合ではない。2~4名は確実に「落ちる」のだ。誰が「危機一髪状態の黒ひげ」をジャンプさせるのか。センター試験の平均点は外部生よりも芸高生のほうが確実に低いであろう現実がそこにはある。

「壁」は、グローバル化の阻害要因

芸高生と外部生との間に見られる心理的な「壁」は、えてして入学後も存在し続けることにもなりかねない。

附属高校のある私立大学などではよく見られる現象ではあるが、やはり芸高生は外部生に気さくに声をかける、外部生は芸高生の輪の中に飛び込んでいくなどして、お互いに壁を取り除いていく努力をする必要があるだろう。

グローバル人材とは、「専門性」と「創造力」と「教養」を持ち、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するための「コミュニケーション能力」と「協調性」を持っている人のことを言う。

安心し気を許せる者同士だけで固まるという行動パターンは、海外に出た時には、外国語ができないことも加わって、今度は日本人だけで固まるという行動パターンへと容易に転換しがちだ。日本人のこれまでの悪しき習性に陥ってしまうことになりかねないのだ。

だから、固まらず、誰とでも融和できるようにする。

グローバル時代は、そんなメンタリティを養っていくことが求められている。

シリーズ【芸大入試のリアル】

【芸大入試のリアル①】偏差値 “ありえね” 受験産業不在の異界

【芸大入試のリアル③】専攻実技 4つの“常ならぬ事態”

【芸大入試のリアル④】 “1単語1秒”ハイフェッツ並みのセンター英語

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 弦だとか弓の毛だとか、そんなことを意識しているようじゃだめなんだ。ヴァイオリンは弾くものじゃなく、歌うものだ。

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