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【芸大入試のリアル】偏差値 “ありえね” 受験産業不在の異界

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「美校」入試は予備校全盛、浪人率7割

東京芸術大学美術学部合格をめざす主人公が、美術予備校を舞台に巻き起こす青春グラフィティ「美大受験戦記アリエネ」をもじって、「偏差値 “ありえね”」とタイトルをつけてみたのだが、お分かりになっただろうか。

この漫画のモデルとなった予備校は、「すいどーばた美術学院」 。2017年度の東京芸大美術学部合格者数は58名と3年連続で全国トップ。専攻別でも日本画・彫刻・先端芸術表現で全国1位と、ダントツの合格実績を誇っている。

とはいえ、そのうちの現役合格者数はと言えば、58名中たったの15名と全体の3割に満たず、7割強は浪人である。

東京芸大(以下「芸大」)が2018年度受験生向けの「大学案内」で公表しているデータによれば、美術学部の2017年度入学者230名のうち、現役は全体の31.3%、1浪が27.4%、2浪が18.7%、3浪が9.1%、4浪以上が9.6%、その他大検等が3.9%という分布状況になっている。

約7割が浪人で、3浪以上の「多浪」も2割いることになる。

他の国公立大学、例えば東京大学では約7割が現役で3割が浪人。現役が明らかに優勢となっている。

現状の大学入試の趨勢とは真逆の芸大入試が、いかに「ありえない」特異な世界かがわかるだろう。

芸大受験生は現役の時から芸大合格実績をウリにする美術予備校に通い、競争率10倍の超難関に多浪覚悟で挑み続ける。

かくして、芸大美術学部入試は「すいどーばた」、「新美(新宿美術学院)」、「御茶美(御茶の水美術学院)」などの美術予備校が覇権を競い合う、受験産業全盛の状況を呈しているのだ。

「音校」入試は門下・個人レッスン全盛、受検産業不在

芸大入学者に出身校を問えば、ほぼ全員が高校名ではなく美術予備校名を答えると言われるほど受験産業ドップリ状態のこの「美校」入試に対して、さて芸大のもう一方の入試、「音校」入試はどのような状況に置かれているのだろうか? ※芸大内ではかつての東京美術学校と東京音楽学校の伝統から、美術学部を「美校」、音楽学部を「音校」と呼び習わす。

そこには、「美校」入試とは全く正反対の世界、実質的には受験予備校など皆無の個人レッスンのみの、これも世間一般から見たら「ありえない」世界が展開しているのである。

幼少期からヴァイオリンやピアノの個人レッスンをスタート。芸大あるいは附属の芸高(東京芸術大学音楽学部附属音楽高校)を狙う場合は、ある時期から芸大の教授陣(現・元)あるいは芸大出身の指導者に師事するのが普通だ。

「音校」入試でも、高校の音楽科や一部の音楽専門予備校といった受験対策のための「表の機関」が存在するものの、実質的には入試合否の鍵を握る専攻実技の力は、芸大教授陣に連なる門下、いわば「影の機関」において養成されているという現実がある。

無意味な芸大音楽学部の偏差値データ

ほぼ「専攻実技がすべて」の芸大入試。

東大や京大などの一般大学の入試情報を扱う受験予備校が提供している偏差値データは、あくまでもセンター試験や学科試験に関するもの。当然ながら実技重視の芸大入試においては、あってないようなものに等しい。

むしろ全く役に立たず、間違った情報ともなりかねないので、提供しないほうが正直ではないか、と言いたくなるような状況である。

試しに、「ベネッセ」 が提供する芸大音楽学部の難易度(偏差値)を見てみよう。

音楽環境創造科60、楽理科59、器楽科52、声楽科51、作曲科・指揮科・邦楽科50

音楽環境創造科と楽理科は、センター試験3教科に、個別学力試験で学科や小論文を課し、それらの総合判定で合否が決まるという、一般の大学と似た方式を取っている。(楽理科には聴音書き取り等の実技もあるが)

一方、器楽科などでは、センター試験2教科(国語・英語)を課すものの、個別学力試験は実技のみで、それが重視され、「センター試験の成績は最終判定に用いる」(※)のみである。(※「平成29年度入学者選抜要項」 10ページ)

受験産業が提供する偏差値データは、合否調査にセンターリサーチや模試の結果等を加えて算出されるものだが、そもそもセンターの得点が合否決定の参考資料程度でしかない芸大音楽学部の入試においては、まったく意味を持たない数字になっているということだ。(但し実技の成績いかんでは、センターの結果が最終合否判定に影響する場合もないわけではない)

とはいえ、やはり気になるのは、芸大音楽学部志望者はセンター試験で一体何点くらい取っているのか、という点だろう。

センターで6割確保が目安か?

その参考程度にはなるかもしれないので、今度は 「受験サプリ」 が提供するセンター得点率のデータを見てみよう。※2018度入試予想 / 河合塾提供のデータ

音楽環境創造科82%、楽理科74%、器楽科63%、作曲科63%、声楽科62%、指揮科61%、邦楽科55%

データ自体があったとしても、わずかな数に違いないが、音環と楽理以外の科では、合格可能性が50%であるセンター試験の得点率は、ほぼ6割程度と推定される。(収集データが少ないので、センターが突出してできた人がいた年は、一部の科では得点率が跳ね上がるという現象が生じがちだ)

無論、センターで6割以上、さらには7割・8割取ったところで、芸大入試の合否にはほとんど役に立ちはしないという現実を考えると、やるせなくもなってもくる。(とはいえ、もしセンターで2割・3割しか取れなかった場合は、最終判定に向けて安穏としてはいられないことはわかる)

かくのごとく、受験産業からは完全に見放された状態の東京芸大音楽学部の入学試験。

次回から、集められ得る限りの公表データを用い、また受験経験者の口承伝承の記録も参考にしつつ、芸大入試のリアル(現実)に迫っていく。

シリーズ【芸大入試のリアル】

【芸大入試のリアル②】「現実倍率」と「黒ひげ危機一髪」

【芸大入試のリアル③】専攻実技 4つの“常ならぬ事態”

【芸大入試のリアル④】 “1単語1秒”ハイフェッツ並みのセンター英語

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  • コメント ( 1 )
  • トラックバック ( 1 )
  1. kohji 様
    コメントありがとうございます。
    過去10年のエチュードと協奏曲については、こちらの記事に掲載致しましたが、それ以上のデータについては残念ながら持ち合わせておりません。宜しくお願い申し上げます。

    http://violinear.com/h27-geiko-entrance-exam-release/

  1. […] このサイトにもあるように、東京芸大の場合は実技が全てであり、非常に高いレベルが求められるので十分快挙だと考えられます。 […]

 弦だとか弓の毛だとか、そんなことを意識しているようじゃだめなんだ。ヴァイオリンは弾くものじゃなく、歌うものだ。

レオポルド・アウアー(List

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