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東京芸大「早期英才教育」 教授陣の “公式指導” が実現へ

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「逸材発掘レッスン」 2015年2月に始動

「ヴァイオリニア」で詳しくレポートした東京芸大の 「スーパーグローバル大学」構想 が、早くも具体的に動き出すことが判明した。

「飛び入学制度」と「逸材リサーチ・プレレッスン(仮称)」。

高校2年終了時の17歳で芸大に入学させる「飛び入学制度」は、2016年春の入試で導入。そして、地方在住の学生を芸大教官が公開マスタークラスと合宿講習で指導し逸材を発掘する「逸材リサーチ・プレレッスン(仮称)」は、2015年春に札幌と福岡で実施と、その具体的なアクションプランが、相次いで新聞社の取材により明らかとなった。

「飛び入学制度」は10月16日に「読売新聞」が報道、その内容は以下の通りだ。

  • 2016年春の入試で「若干名」を募集
  • 国際コンクールの入賞歴等の実績で選考
  • 東京芸大附属高生を優遇することはない

一方、「逸材リサーチ・プレレッスン(仮称)」は11月25日に「毎日新聞」が独自取材によるスクープで第1面に大きく取り上げ、各新聞・TVもこれに追随、「芸大が小学生に英才教育」という印象的な見出しで、大きな注目を集めた。

  • 小学4~6年を対象に、まず2015年2月に福岡(ヴァイオリン・フルート)、3月に札幌(ピアノ・ヴァイオリン・フルート)で実施
  • 現地の芸大卒業生らが応募した小学生を各地区20名程度に事前選抜し、選ばれた受講生を芸大教授陣が公開会場でレッスンする(受講料は無料)
  • その後、夏休みなどに東京・上野の芸大キャンパスに招き、1週間程度の合宿レッスンを行う
  • 2015年以降、実施会場(大阪や名古屋も検討中)・選抜人数・対象楽器(管楽器)・対象年代(小学低学年から中・高校生)を順次拡大
  • 2014年度中に公募を開始

“藝大力” 構想実現を「公約」

今回の報道が芸大の学内に及ぼす影響は小さくない。

メディアで大きく報道された以上、「もう後には引けない」という気運が今後、芸大内で否応なく高まっていくだろう。

どの世界でも改革に直面すると、その初期段階では、内部にまだ懐疑心や消極的なスタンスがはびこっているものだ。それらを早々と一掃し、学内が一枚岩となって改革に取り組む覚悟が、広くステートメントとして一般に示された意味は大きい。

年間1億7千万円の補助金を10年間投入する文科省は、「スーパーグローバル大学」構想の達成状況を今後厳しくチェックしていくはずであるが、今回の報道により世間もその成果に大いに注目することとなった。

もう「実現するしかない」のである。

芸高・芸大受験 非公式な “決まり事”

今回の「逸材リサーチ・プレレッスン」についてさらに注目したいのは、芸大が「大学として」早期教育に本格的に取り組むことが、地方の器楽学習者とその育成のあり方に及ぼすインパクトである。

従来、地方で芸高・芸大を目指す学習者は、まず地元の芸大卒OBの指導者に師事し、上達するとその指導者から芸大教授陣(現・元)を紹介され、定期的に上京して個人レッスンを受けるようになる。あるいは、地元の音楽教室等に客員講師として招かれる芸大教官の個人レッスンを受けることもある。そして夏休みや冬休みには、芸大教官らが講師となる合宿講習等(民間主催)にも参加する。

このように、芸高・芸大を受験するためには、まずは芸大教官の「私的門下」に入る必要があるのだ。(芸大学外の大物を第一指導者、芸大教官を第二指導者とする例外もあり)

入試では、師事する芸大教官は採点に加わらないルールだが、「芸大的な入試基準」に合致した指導を受けるためには、芸大コミュニティに属する先生に師事しておかなければならないと考えるのがこの世界では当然のこととなっている。

私立音大なら、受験生はキャンパス内での夏期講習を受けるのが一般的だが、芸大は大学としては受験生に対しそのようなオフィシャルなアプローチは行っていない。唯一の開かれた場は、芸高が志望者に対して行う「学校説明会」(施設見学と入試Q&A)くらいだろう。

このように大学としては公式には一切行わないが、それでも芸大教官は、自らの門下生への個人レッスンという形を通じて、非公式に「学外で」早期教育を行い、芸高・芸大を受ける学生を発掘・育成してきたとも言える。

しかしそのあり方は、外の世界からは実に分かりにくく、一般的とは言い難い。

幼児から入室できる附属音楽教室を展開し、教室生を附属高校へと囲い込んでいく組織的な早期教育プログラムを推進する私立音大に、明らかに遅れをとっていると言えるだろう。

芸高・芸大を目指す側も、まず芸大教授陣の「門下」に入るために、いろいろとツテを辿って、しかるべき指導者を探し当てる。それがそもそも可能な父兄(自らが芸大OB)ならまだしも、そうでない父兄は、涙ぐましいインサイドワークを要求されてきたのである。

芸高・芸大が「公式な目標」になる

今回導入される「逸材リサーチ・プレレッスン」は、芸大が大学としてオフィシャルにマスタークラスと合宿講習を運営し、才能ある学生を選抜・育成していくプログラムである。

それは世間一般に公開で行われるプログラムであり、その選抜に合格し、芸大教官のレッスンを受けること、上野のキャンパスでの合宿講習に招待されることが、地方の芸高・芸大志望者にとっての明確な目標となり得る。

非公式なインサイドワークの対象から、公式なトライアルの対象に。

芸大がそのような存在として、地方の学習者の目前に立ち現れる意味は大きい。

無論、芸大側がアプローチしてきたからと言って、芸高・芸大入試の門戸が広がったわけでは決してない。「私も芸大に行けるかも」という気分に応えてくれるほど入試は甘くないし、芸大側の目的は、あくまでも地方に埋もれた逸材の早期発掘にこそある。

私立音大附属教室生も無視できない?

来春、福岡と札幌で開講されるレッスンは、小学4年~6年が対象。試行期としては打って付けの年代だろう。

レッスンの成果はすぐに「学コン」小学校の部等のコンクール実績へとつながり、耳目を集めやすい。

そして、私立音大附属の音楽教室に通わせる家庭には、別の将来の選択肢が目と鼻の先にはっきりと示されることにもなる。

すでに芸大教官の門下生となっている学生が多く選抜される可能性もなきにしもあらずだが、それでも尚、地方の学習者にとっては、将来につながる貴重な挑戦の場が増えたことは歓迎すべきことだ。

「逸材リサーチ・プレレッスン」の継続的推進は、将来的には地方の学習者の裾野拡大と質の底上げ、一定レヴェル以上の実力者層の形成に寄与することになろう。

年内にも発表される応募要項が待たれるところだ。

photo by Tyoron2

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 ヴュータンは壮大なスタイルで書きました。その音楽はどこをとっても豊かでよく響くものです。自分のヴァイオリンをよく鳴らそうと思うなら必ずヴュータンを弾いてほしいですね。

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