Violinear

スポンサーリンク

【2015学生音コン】 東京大会中学校の部・本選結果レヴュー

suntory_hall_ceiling_P1000006
「第69回(2015年)全日本学生音楽コンクール」バイオリン部門・東京大会・中学校の部は、サントリーホール ブルーローズで、10月18日に本選が行われた。

今年も実力伯仲

8月22日・23日に東京オペラシティ リサイタルホールで行われた予選には、82名がエントリーし、18名が本選に駒を進めた。(昨年はエントリー83名、本選進出15名。一昨年はエントリー80名、本選進出16名)

本選課題曲は、ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲 第5番から、第1楽章(カデンツァ、モデラートまで)。1861年にヴュータンがブリュッセル音楽院の卒業試験の課題曲として作曲、その後1878年にパリ音楽院の卒業試験の課題曲用に改訂された曲だ。

時に明るい表情を見せつつも、全体にメランコリックな抒情が流れる第1楽章。古典的で端正なフォルムの随所に、技巧的な彩色が全体のトーンを乱すことなく絶妙に配置される。

第1楽章末のカデンツァに至っても、技巧は誇張され過ぎず、この曲の格調の高さが失われることはない。

奏者の技術と音楽性とを試す課題曲としての特性を備えつつも、尚それを超える芸術性に溢れた作品である。

正確な音程、鍛錬の跡が如実に見て取れる左手の動き、鋭さと柔軟さを兼ね備えた弓遣い。

厳しい予選を勝ち抜いた18名のファイナリストは皆、見事にこの曲の世界を彫塑していた。

結果は6名が入賞(第1位~奨励賞まで)。

昨年は7名、一昨年は8名。(その前の年は5名だが、1位が2名、2位が2名出た)

まさに実力伯仲、僅差での激戦の様相に今年も変化はなかった。

このエイジクラスの最高レヴェルのコンテスタントが競い合う舞台では、課題曲を課題曲として正確にミスなく弾くだけでは、入賞は難しい。

上位入賞者の中には、カデンツァの緩急を自在にコントロールする力、卓抜なヴィブラートから紡がれる魅力的な音質等、他との違いを印象づけた演奏があった一方で、惜しくも入賞を逃した演奏の中にも、入賞ラインに入ってもおかしくないと思われるものがいくつかあった。

課題曲との相性、演奏する日・場所、その時のコンディション等の要素が、受賞結果に微妙に作用した側面もあるのかもしれない。

たった1~2点の採点結果の違いが、入賞や順位を分ける可能性があるのが、このコンクールの現実である。

プレゼンスのある演奏

入賞に必要な要件とは何か?

学コン及び他のコンクールでの実績により培われるプレッシャーがかかる中での演奏経験と高いモチベーション。

中学生になってからの専門的アプローチの真摯な積み重ね。

そして、そのような基盤を前提にしつつ、採点において、さらに1~2点を上積みするために重要なのは、演奏におけるプレゼンス(存在感)の表出であろう。

学コン本選では同じ課題曲が10数回繰り返される。

聴く側にとっては、すべてが流れていく。

時間はとどめ難い。

主張する部分は、いくつもの比較の中に置かれ、核心が靄にかかってしまう。

その中で、流れる時間を止め、自身の演奏に客席を引き込み、惰性の聴覚にインパクトを与え得るのは、奏者のプレゼンス(存在感)に他ならない。

そしてそのプレゼンスは、日々の練習における「こだわり」から生まれる。

例えば、「2015エリザベート王妃国際」優勝のイム・ジヨンさんのこだわりは、不完全な箇所の徹底した修正作業であった。

コンクールへの準備の仕方-「エリザベート王妃国際」覇者が語る

こだわりの対象はいくらでもある。

音程を完璧にする。音色を究める。ヴィブラートの種類を増やす・・・

それぞれの奏者の持ち味と個性の中で、テーマを決め、そこにこだわった練習を粘り強く続けていく。

こだわりにより獲得されたその奏者固有のコアとなる力。

それがコンクールのステージ上で発揮された時、異彩の輝きを放つプレゼンスが生まれる。

スポンサーリンク
 ヴュータンは壮大なスタイルで書きました。その音楽はどこをとっても豊かでよく響くものです。自分のヴァイオリンをよく鳴らそうと思うなら必ずヴュータンを弾いてほしいですね。

ウジェーヌ・イザイ(List

スポンサーリンク
Return Top