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コンクール感動秘話:「少年と弓」

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音楽の女神の突然の仕打ち

少年はぼう然自失の状態で、舞台袖にあった椅子にへたりこんだ。

たった今起こった突然の出来事に打ちのめされ、顔からは完全に生気が失せていた。

舞台袖にはコンクールの係員らが控えていたが、彼らもどうしていいかわからずに、ただ下を向くしかなかった。

少年の右手には弓。しかし、それは弓と呼ぶにはあまりに無残でいびつな姿をさらしていた。

少年は泣いてはいなかった。

自らのミスゆえなら悔恨の涙も出る。が、それは明らかに事故としか言いようがなかった。それも音楽の最も美しい瞬間に突然訪れた事故・・・

15歳のその少年が弾くバルトークのヴァイオリン協奏曲第2番は、ホールの雰囲気を一変させていた。

練り込まれた美音、豊穣な技巧と流麗な歌い回しに、観客はこれがコンクールであることを忘れ、少年の演奏に酔いしれていた。おそらくは審査員も。誰もがこの中学3年生の勝利を信じて疑わなかった。

しかし、その時、誰も予想しなかったあの事故が起こったのだ。

少年の快刀乱麻を断つボウイングをまるであざ笑うかのように、突然、弓の先端のクサビが壊れ、吹き飛んでしまった。

その瞬間、会場内からは悲痛な叫び声が起こった。

つなぎ留めを失った弓の毛はバラバラとしだれ柳のように垂れ下がってしまった。悲鳴の後、今度は凍りついた静寂に会場は包まれた。

少年は、はずれたクサビを拾い上げ、ふらふらと舞台袖に引きあげるしかなかった。

あの至高の演奏の途中の出来事・・・。ミューズ(音楽の女神)の気まぐれにしてはあまりにも残酷な仕打ちだった。

photo credit: jon.t via photopin cc

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 ヴュータンは壮大なスタイルで書きました。その音楽はどこをとっても豊かでよく響くものです。自分のヴァイオリンをよく鳴らそうと思うなら必ずヴュータンを弾いてほしいですね。

ウジェーヌ・イザイ(List

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